恋愛だけでは限ることの出来ない男女の仲
まったくもって肌に悪い。夜勤明けのくるみは自宅の最寄りのバス停で降りて鍵をふりまわしながらそう思った。朝日が目にしみる。できれば日勤だけの外来病棟がよかった。移動願いは何度も出しているものの受理されない。それはくるみが不定期に雑誌に出ることを容認してもらっているからだ。
くるみは、水着になって笑顔でグラビアを飾る、いわゆる「グラドル」だ。正直売れていない。看護師の給料がなければやっていけないのだから仕方がなかった。ちょっと行き詰っている感に悩まされている。こういうときは暇なオトコを呼び出して、セックスするに限る。そう思いながらハイヒールを鳴らしていると、アパートの前に見知った若い男を見つけた。
克己だ。早稲田経済学部の2年生。最近クラブで知り合ったDJだ。なんとなく人恋しかったくるみは走って克己に抱きついて、ニットの背中をたくしあげて背骨を撫でた。
もつれ合うように階段をのぼり、玄関で靴も抜かずに立ったまますぐに挿入した。口腔外科外来の瀧川先生の事を思いながらその指で愛撫され、乱暴に唇を吸われる様を想像する。既婚の瀧川先生はどうしても浸食できない聖域のような男だった。白衣のまま入院病棟の医局に忍んできてほしいと何度願ったことか。医療用ゴム手袋を着けたまま、わたしの内側をかき回してほしい。乳首を弄ってほしい。そう想像しただけでどっと快楽が押し寄せ、克己の射精を待たずにくるみは達してしまった。瀧川先生が欲しい。あの端正なたたずまいが崩れる様を見てみたい。
克己はやさしいし、人脈もあるけど、この不景気にIT起業を狙っている学生なんて、正直初対面から興味を削がれた。わたしはグラドルを続けたい。お金も欲しい。でも、はずみで寝てしまったときにセックスの相性が抜群だということに気がついた。手放せないほどぴったりだった。
ベッドに移動しようとする克己をつかまえて、さっきまで自分の中にいた彼の性器を口に含んだ。微笑んで下から見上げる。克己は真っ赤になって刺戟に耐えていた。自分の味のする性器は簡単に反り返り、すぐに射精した。瀧川先生を蹂躙する想像をしながら、克己の弱いところを責めた。
そうして、我慢の出来なくなった克己はくるみを抱えあげ、ベッドに移動して長い愛撫を始めるのだ。芸能界のちくちくとした面倒や病院での噂話、冷たい人間関係を忘れ去るまで。